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管理人が訊く「Gravity」

管理人

それでは、本日の「管理人が訊く」、
物理演算パズルゲーム「Gravity」について
聞いていきましょう。

ぽり0655

はい、お願いします。

偶然全てのパズルピースをうまくはめることが出来た

管理人

このゲームは、当時としては
かなり野心作だったと思います。

ぽり0655

ありがとうございます。
でも自分ではそんなつもりは無かったんですけどね。

管理人

このゲームを作るに至った話を
聞かせていただけますか?

ぽり0655

Gravityの構想は公開1年前、
だいたい「plate」公開の頃にありました。

管理人

パズルゲームを公開して、すぐに次の
パズルゲームを構想していたわけなんですか。

ぽり0655

はい。当時からplateとは別の方向のパズルゲームを
作りたいと思っていました。
plateは小学生時代に作った「パズルのネタノート」が原作でして、
その原作を忠実に移植することに関しては上手く出来たと思うのですが、
どうしても思うところはあったんですよ。

管理人

例えばどのようなところですか?

ぽり0655

plateは原作が「ノートに書いたパズル」なので、
アナログゲームとしての作りだったんですね。
なので「1度解いてしまったらおしまい」という
リプレイ性のないゲームだったり、
そもそもデジタル化の恩恵をあまり受けないゲームだったんです。

管理人

確かに、plateは「雑誌に書いてある『パズル問題』」でも
大きく影響しないゲームでしたからね。

ぽり0655

そこで、逆に「何度も遊べる」や「デジタルという長所を活かした」
ゲームはどういうものか、というルールを考えた結果が、
Gravityというゲームだったんです。

管理人

当時としては「重力演算」というものも珍しい要素でしたが、
これはどの段階で決めたのでしょうか?

ぽり0655

これはルールを考える過程で「アクション寄りのルールにするのが最適だ」と決めて、
ルールを決めた後に「じゃあウディタで物理演算どうしよう?」と考えた感じですね。

管理人

まずゲームのルールを考えて、
そのルールをウディタで作るには、という方向で作り上げたわけですね。

ぽり0655

はい。
でも、本来ならこの作り方は
あまりよろしくない作り方なんです。
今回は偶然完成までいったからよかったですが、
もし「ウディタで作れそうもないルール」を思いついていたなら、
企画書ごとゴミ箱に行って終わりでしたからね。

管理人

普通は企画書の時点で
「これはちゃんと作ることが可能なのか」を考えてから
ルールを考案するのが普通ですからね。

ぽり0655

はい。その意味で、私にとってGravityは
「偶然全てのパズルピースをうまくはめることが出来た」ゲームでした。

ユーザビリティやアクセシビリティ

管理人

そのほかにも、Gravityにはいろんな評価をいただきましたよね。
先ほどの「重力演算が珍しい」の他にも、
「プレイしやすい」という評価も多かったように思います。

ぽり0655

ありがとうございます。でも、実際に
「ユーザビリティ(※1)やアクセシビリティ(※2)」というものを本格的にゲーム内に導入したのは
Gravity以後なんですよ。

※1ユーザビリティ(usability):
この場合は「ある製品が指定された目標を達成するために用いられる際の有効さ」を指す。
日本語の「使い勝手」に近い意味を持った用語。

※2アクセシビリティ(accessibility):
この場合は「様々な使用者が支障なくサービスを受けられる度合い」を指す。
日本語の「バリアフリー」に近い意味を持った用語。

管理人

ハンディキャップのある方の存在も考慮するようになったんですね。
例えばどのような要素を導入したのですか?

ぽり0655

うーん、色については「視力の悪い方も見づらくならないように」という事をGravityあたりから考えはじめました。
でもそういう大きな意味での「アクセシビリティ」ではないんです。

管理人

というのは?

ぽり0655

アクセシビリティと言うと、「障がいのある方でも問題なく使える」のような大きなものを考えてしまいがちですが、
あくまで私は「パズルゲームが苦手な人でも健闘できる」のような小さな要素でも
立派なアクセシビリティだと思っています。

管理人

そういえば、Gravityは得意なコースでスコアを上げれば
苦手なコースはやらずに先へ進めましたね。(※)
あれが「苦手な人でも健闘できる」アクセシビリティ、と?

※苦手なコースはやらずに……:
Gravityは「10コースの合計得点が一定以上」なら次へ進めるシステムであった。
すなわち、1コースの得点が非常に高ければ、残り9コースの得点が低くても先へ進める。

ぽり0655

……はい。そういうことになってます。

管理人

あれ?今一瞬
言いよどみましたね。

ぽり0655

……実はあの要素は
「チュートリアルが不要なぐらい上手な人だけが
 チュートリアルをスキップできる」機能として作ったんです。

管理人

つまり、「得意な人が楽できる」ために作ったルールが、
「苦手な人でも健闘できる」ルールとして評価されたわけですか(笑)

ぽり0655

……はい。
そういう意味でもGravityは
「偶然全てのパズルピースをうまくはめることが出来た」ゲームなんです。

ゆっくりであっても最終的には自力で

管理人

今の話で気になったのですが、
「苦手な人でも健闘できる」とあえてぼかした言い方をしましたね。
「苦手な人でもクリアできる」ではないんですか?

ぽり0655

はい。あくまで「健闘できる」という考え方です。
というのも、クリアできずに困っている方に、ボタン1個でクリア扱いさせることは簡単ですが、
それは何の解決にもなってないと思うんです。

管理人

あくまで自力でクリアすることが必要、と。

ぽり0655

はい。
例えば、「階段が急でのぼれない」と困っている人のために作るべきなのは、
「登りやすくする手すり」や「転んでも怪我しないクッション」であって、
階段の横にエレベーターを設置するんじゃ意味が無いと思うんです。

管理人

それじゃあ「はじめから階段を作る意味は?」と
なってしまいますからね。

ぽり0655

それに、「階段が急で登れない」という方のプレイをしっかり見ると、
意外と階段の幅を広くしてあげるだけで、階段の角度を変えずとも
すいすいのぼれたりしちゃうものなんですよ。

管理人

「階段が急だ」という方の問題の本質は
階段が急であること以外にもある、ということですか。

ぽり0655

そうですね。
階段の幅を広くとってあげて、クッションを各所に配置して、
「転んでも怪我しないからどんどん行こう!」と背中を押して、
ゆっくりであっても最終的には自力で2階へ行かせることが、
本当の「プレイしやすさ」だと思いますし、
本当のアクセシビリティだと思います。

管理人

なるほど。
それでは本日はいい話を聞かせて頂いて
ありがとうございました。

ぽり0655

はい。ありがとうございました。