第14回 WOLF RPGエディターコンテストぽり視点レビュー


こんにちは。ぽり0655です。
毎年恒例のウディタオンリーのコンテスト、「WOLF RPGエディターコンテスト(通称ウディコン)」の季節が今年もやってまいりました。
今年も昨年同様、「作者さんへ向けた指摘」と「プレイヤーさんへ向けたゲーム紹介」の二方向からレビューを構成していきます。

上の画像をクリックして「ネタバレフィルター」をONにすると、レビューページから「作品の問題点」「改善提案」、更に褒め言葉であっても「ネタバレ部分」が非表示になります。つまりゲームへのDLリンクとその紹介文だけになります。
これからプレイする方が批判点に惑わされずに作品を選ぶ参考になってくれれば。
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:作品の良かったところ
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※ゲームのバージョンによっては、このレビューで指摘した内容が既に修正済みである可能性もあります。
もし、このレビューに関してご意見ありましたらpori0655(あっとまーく)ymail.ne.jpまで。

003:オトリズム

ジャンル:リズムゲーム

プレイ時間:エンドロールまで60分(1曲2分前後、31曲(+1)*3難易度収録

レビュー時点のバージョン:1.2.0(旧バージョン)


いわゆる音ゲーをそこそこにたしなむ自分にとって「非常に叩いてて楽しい譜面の作り方をしてるなあ」と感じた。昨今の音ゲーでよくあるのが「難易度を上げるためにリズムからズラした『叩いても楽しくない箇所』にノートを仕込む」という本末転倒なんだけど、この作品ではあくまでメロディ・リズム準拠で難易度を無闇に上げることをしなかったのが好印象。


特に低レベル帯において、ゲーム中表記の難易度と実際の難易度が乖離している印象を受けた。たぶん作者さんが音ゲー高レベル帯の方なんだろうけど、「初心者さん~中級者さん」に対しての動線は不足している印象かな。<???>


とは言え、これは「このゲーム特有の弱み」というよりは「音ゲーというジャンルが潜在的に抱えている弱み」な気もする。既存のシステムを100%組み上げることに関してはもう文句なしの作者さんなので、これからは120%を狙うところを視野に入れてほしいなあ、と思う。<???>

007:少女大猩猩

ジャンル:ADV+ACT

プレイ時間:約20~30分

レビュー時点のバージョン:1.02(旧バージョン)


一見ネタ要素に見える(実際ネタ要素ではあるが)ゴリラメタモルフォーゼなんだけど、実はとても理にかなった作りをしている。例えばゴリラモード中だと完全無敵であることで、「鬼から逃げながら謎解きをする追いかけっこゲームなのにちゃんと考える時間を確保してくれる」ところや、「完全無敵のゴリラモードだとイベントが全部ゴリラ語になるから2周目でちゃんとイベントを見たくなる導線がある」ところとか。


「ゴリラメタモルフォーゼ」がそれだけ重要な機能にも関わらず、ショートカットが使えるのがキーボード操作限定なのはツラい。ゲームパッドの場合、キーボードの4~5倍操作に手間がかかる。<???>


ゲームパッドの1キーショートカット……とまでいかなくても、せめてメニュー画面選択肢の一番上にメタモルフォーゼがあったほうが便利かも。よく使う操作はよく使える場所に置いておくのが定石。<???>


ナナハちゃん×リンちゃんがてぇてぇでかわいいです(*´Д`*)

008:Cell's Shooting

ジャンル:2Dシューティングゲーム

プレイ時間:5分×

レビュー時点のバージョン:7/16公開版(旧バージョン)


基本シューティングでありながら、根っこのシステムにライフゲームを取り入れるというのは発想の勝利。ライフゲームはただ処理するだけでも「演出が派手」になって「規則的に動く姿に美しさを感じる」という部分が担保されているわけだから、どう調理しても美味しくなる調味料みたいなもの。


とは言え、いくらなんでも「ライフゲームを見て楽しむ」の方向に振り切りすぎ感は否めない。完全にプレイヤーさんに覚えさせる気のないスコア計算式とか、イベントの貧弱さとかは「逆にシューティングは必要だった?」という感想になりかねない。<???>


このゲームの比率としては、「シューティングもあるライフゲーム」よりは「ライフゲーム要素のあるシューティング」のほうが綺麗に収まったかもしれない。あくまで基本はシューティングで、自分の弾がライフゲームのように増えていって敵を飲み込む……とかの方がお互いの長所が生きたかもね。<???>

011:家路~いへぢ~

ジャンル:探索ホラーアドベンチャー

プレイ時間:1~2時間

レビュー時点のバージョン:1.00


このゲームをプレイしていて感じたのは「作者さんの緻密な計算の上で作られている」というところ。マップの色調演出や覗き込みの演出などは「ウディタのマップ機能でできること」を理解した方がその範囲内で映える演出を作ろうと逆算した感じがする。他にも逃げるべきオニに対しても行きと帰りで配置を変えて、マップ切り替えの瞬間に鉢合わせするリスクをなくしている作りなのが緻密で美しい。


指摘点というより半分バグ報告に近いんだけど、覗き込む際にマップチップ変更→マップズームの順で処理しているので一瞬マップ全景のオニが見えちゃって興が削がれる感じはする<???>


……とは言え、このバグによって難易度が抑えられるメリットもあるので、敢えて直さないのもあり。こんな感じの「プレイヤーさんがクリアするためにズルをさせる余地」を残す目的でわざとバグを放置するのは、昔からよく使われてきた手法だったりする。<???>

012:陰都見聞録

ジャンル:ADV要素強めのRPG

プレイ時間:2~4時間

レビュー時点のバージョン:1.08


もちろん3Dも素晴らしい。そのうえで「3D以外にも敢えて難易度の高い挑戦を多数行っている」挑戦的な作品だと思った。「喋りながら歩ける」という処理も、「わざわざ斜めの坂道を作ってちゃんと移動制限を見た目通りに行っている」こととか、それぞれ処理としては3Dに引けをとらないぐらい難しいもの。


3Dとは関係ない、細かいところでストレスが溜まる作りだったのが惜しいなあ。カメラはずっと東を向いた状態で東西南北で地名を言われるところ(RPGやっている人的には「上方向=北」で刷り込まれているはずなので)とか、陽気(=HP)が街を歩くだけでも減るので、頻繁に回復ポイントへ移動させられておちおち街の散歩もできないところとか。<???>


特に陽気の件は「世界観とゲームの付き合い方」としてとても重要な話だと思う。ゲームの世界観としてそれが正しいとしても、結局プレイヤーさんがどのように動くか、と考えたときに「守るべき世界観」と「守らないほうがいい世界観」「変えるべき世界観」というのはあると思うし、そこがたぶん「小説」と「ゲーム」で一番作り方の異なるところなのかもなー。<???>

014:Helios Order -賢者の石と輝炎の王-

ジャンル:リアルタイム成長+カウントタイムバトル

プレイ時間:7~10時間

レビュー時点のバージョン:1.02(旧バージョン)


プレイヤーさんがシナリオに集中できるように行っている「配慮」が各所に見える作り。例えば「イベントが進む条件(会話キャラ)がひと目で分かる」ところとか「決して少なくない専門用語・人名をゲーム中のイベントなどで積極的に説明しようとする」ところ。長編RPGだとどうしてもプレイ途中で日をまたぐわけで、前回のプレイがどんな感じだったか完全に思い出せなくてもなんとかなるというところはかなりの魅力。


「とりあえず実装しているけど面白さに寄与していない捨て要素」が多い感じを受けた。攻撃順を決めるタイムライン要素もほぼ誤差レベルなので「うまく立ち振る舞えれば相手に行動させる前に全員倒す」なんて芸当は無理そうだし、オーブもすべての色・全てのサイズが変換効率100%で交換が可能となれば、「どのオーブを手に入れても大差はなく、変換時間だけ無駄にかかる」要素になってしまう。<???>


個人的にはマップ、特にダンジョンマップが味気なさすぎる感じだったので、変にごてごてシステムを盛るよりはシンプルにして、そのぶんマップやマップ中のイベントに制作時間をかけたほうがバランスが良かったのかも。 <???>

016:カードカプラーアリス

ジャンル:ノンフィールドRPG

プレイ時間:2~4時間

レビュー時点のバージョン:1.04(旧バージョン)


序盤からフルスロットルでパロディネタをブチ込んできているけど、プレイヤーさんを置いてけぼりにするギリギリ直前で止まるような「引き際」は心得ている作者さんかな、と感じた。カードの効果とか非常に多様ながらチュートリアルもとても丁寧だし、「プレイヤーさんがついてこれる範囲で自分のやりたいことを好き勝手にやってる」とても好印象の作者さんという感じ。


これは本当に人によるんだろうけど、「プレイヤーさんが無駄に一手間かけさせる瞬間」が存在するゲームシステムなのが微妙。ダメージ計算式が明確なのは良いんだけど、その計算はプレイヤーさん側が手計算する必要があったり、短編~中編の短いゲームで4デッキも管理させるのは普通に手間だなー、と思う。<???>


たぶん作者さんの思想と自分のプレイヤーとしての思想が一致しなかっただけで、別に絶対直すべき部分だとは思ってない。それでも「威力:(魔力)/2+8」ぐらいは計算済みの数値を知らせても悪くないと思うし、デッキ1つパーティ1つでそのぶんカード枚数は多いとかでいいと思う。<???>

020:ベジダンッ!

ジャンル:自動戦闘RPG

プレイ時間:1~2時間

レビュー時点のバージョン:1.0.0


自動戦闘+一部プレイヤーの介入要素があるゲームだけど、その介入要素がだいぶクセありでその場での立ち回りが要求されるのが面白い。ブロッコリー(仲間のHP減)→なす(一番HP低い人が回復+攻撃増強)みたいな戦法を組み立てるところとか、だいぶプログラマー的立ち回りが要求されて斬新。


システムはこだわっている反面、それ以外にはブラッシュアップ不足を所々で感じる作りだったかなあ。基本一本道でギミックのないマップとかは「別になくてもいいんじゃない?」と感じるし、ダンジョンの奥へ行く「動機づけ」みたいな部分が弱いのでモチベーションがすぐに切れる作りのシナリオとか。<???>


システム自体は十分完成されたと思う。となれば、「プレイヤーさんのモチベーション維持」という面での作り込みをしてみるのもいいかも。<???>

024:ウルファールの冒険

ジャンル:RPG

プレイ時間:20分~1時間

レビュー時点のバージョン:1.1.4(旧バージョン)


いい意味でレビューとしてコメントに困る内容。一見未熟な作者さんが作ったゲームと見せかけて、本筋から逸れた行動をしてもしっかりフラグとシナリオが破綻なく動いてくれるので、間違いなく熟練の作者さんだと気づける。プレイ中はずっと作者さんの手のひらの上で弄ばれているような感じがしたゲームだった。


敢えて指摘をするとしたら、ツッコミがチープすぎてツッコミとそうじゃないところのシナリオの高低差が激しすぎ。もちろんこれも狙ってのことなんだろうけど、それでもチープなツッコミには「シナリオとして引きつける力」が弱いわけで、先に進めようという気力を削いでしまう。<???>


モチベーションを維持するための「緩急」みたいな演出は時々入れておいたほうが良かったかもね。「これは本気じゃなくてわざとやっているんだよ」と思わせるためのインターバルとしてのイベント(要所要所でゲーム外の話に転換するとか)があったほうが最終的に引き込まれるプレイヤーさんは増えていたかもしれない。<???>


ウルファールさんはとても強くて美しい。数多くの「ウルファールさん」をリアルで見てきた僕だからこそはっきり言える。この文章の本当の意味を理解してくれるのはごく僅かかもしれないけど、それでも伝えたい。ウルファールさん……<ネタバレ!>

027:選択肢がなでるとなめるしかないゲェム

ジャンル:マルチバッドエンドなノベルゲーム

プレイ時間:5分

レビュー時点のバージョン:1.1


中盤以降のパロディの連打気持ちよすぎだろ!って感じのゲーム。なにかのゲームとゲームの間で一発ネタとして楽しむ「潤滑油」としてのゲームとしてとても好印象。


こういう「何度も最初からやり直すことを想定しているゲーム」なのにイベントとイベント間のウエイトが多すぎる気がする。<???>


1プレイ5秒程度のウエイトだったとしても、10回プレイしたら50秒の何もできない時間になるわけで、到底無視できない「引っ掛かり」になる。「演出として無いと絶対に成り立たない!」というシーン以外ではウエイトは無くしてしまったほうがいいのかも。<???>

029:フィッシュ・フックは涙しないRE

ジャンル:2D探索型アドベンチャーゲーム

プレイ時間:3時間~3時間半

レビュー時点のバージョン:1.00(旧バージョン)


ゲーム序盤から意味ありげに出てくるのに一切説明のないマウスカーソルについてずっと疑問だったんだけど、途中で理由が判明したとき頭の中に「腑に落ちる」音が響いた。システムの面でもシナリオの面でも「メタな表現」が非常に高レベルに作られていて、しかも奇麗につながっているハイクオリティのゲームだと感じる。


一方、謎解きゲームとしては説明やシステムが優しすぎる、悪く言っちゃえば過保護な出来かなー、と感じた。歩くときに自動的に障害物への引っかかりを回避する機能もやや暴発しがちだったり、謎解き用のアイテムを手に入れた次の会話文ですぐにアイテムの使い道の説明が入るせいで謎解きする暇も無く興ざめだったり。<???>


「ゲームって別に限度さえ超えなければ多少不便でもいいんだよ」っていうことはこのゲームに限らずいろんなゲーム作者さんに伝えたい。ゲーム作者さんとしては「敢えて入れない」という選択をするのはかなり難しいけど、時々その選択をする必要があるシーンは出てくる。<???>

030:HOLLOW LONGING

ジャンル:楽園探索アドベンチャーゲーム

プレイ時間:4時間~6時間程度

レビュー時点のバージョン:1.04


2Dとも違う、かといって3Dとも違う独特の空間表現をしているマップが麗しい。そんなマップが進んでも進んでも新しく出てくるから、カルピス原液を一気飲みしたような濃厚な体験ができる。


イベントがちょっとムダに長いと言うか冗長というか、「そこにそんなに時間かける?」と感じるイベントが多かったイメージ。もちろん空気感を引き立てるための「間」は重要だけど、多すぎて「間延び感」ともなっていたかな。<???>


必須で通ることになるイベントぐらいはもっとスッキリまとめてもいいのかなあ、と思った。めちゃくちゃ語りたいことがある(非常に世界観を凝ったシナリオ)場合におまけとして図書館や着替え・料理イベント用意していたのはとてもアリだと思ったので、そっちにテキストは持っていって、必須イベントはあくまで「マップを楽しむ」に時間を割り振っていってもアリだったかも。<???>

031:プルガ猫トリウム

ジャンル:マウス操作アクションゲーム

プレイ時間:クリア30分~1時間、やりこみ3~4時間

レビュー時点のバージョン:1.20(旧バージョン)


文章で全く説明できない状況でゲームの概要をプレイヤーさんに説明するのって、実は想像以上に難しいテクニック。それに加えて音同期アニメーション+リアルタイム処理弾幕避けゲーのシステムを軽量に作り上げるのはそこそこ至難の業。思っている以上に難しいことをやっている「挑戦」のゲームだな、と思った。


同じ曲、同じアニメーションの演出違いしか無いというのはちょっと良くない水増しの仕方。難易度が高いというより、「頑張って先を見たい!」と思う気力が全然わかないせいで中盤で詰まりがち。<???>


作者さんがどのレベルまで意図してこの演出にしたかはわからないけど、「プレイヤーさんにトラウマを植え付けてこの曲を嫌いになってもらいたい」という目的でない限りは、もっと曲やアニメにバリエーションを持ってプレイヤーさんに寄り添った演出にしてあげるべき。<???>

036:数で押し切れ。

ジャンル:完全自動戦闘のダンジョン探索ゲー

プレイ時間:1時間~2時間くらい

レビュー時点のバージョン:1.01(旧バージョン)


システムが「ゲーム制作に小慣れた人」の余裕みたいなのを感じる堅実な出来だった。作るのが難しい自動戦闘自体もシステムが素晴らしく、更に戦闘が拮抗したときの対策を入れてくるあたりもできる人感を感じる。あとは所持金がアイテム扱いというのも「新規システムを作ること無く、アイデアで可能な限り流用しよう」という発想の転換を感じさせる。


戦闘が自動なのも、稼ぎ・レベルアップ前提なのも別に問題ではないんだけど、この2つを組み合わせるのは相性が悪い気がした。戦闘が自動というのは言い換えれば戦闘中にプレイヤーさんが暇を持て余すと意味でもあるわけで、この戦闘回数が必然的に多くなる稼ぎ前提の作りというのは、つまり暇を持て余す時間がゲーム中の大部分を占めてしまうという結果になっちゃう。<???>


プレイヤーさんが暇を持て余すことの無いよう、戦闘中にプレイヤーさんが介入する要素があるともっと良かったかも。例えば「攻撃・防御・補助」の作戦をリアルタイムで変える機能とかね。<???>

037:サッカー好きがつくる ウディタサッカー

ジャンル:サッカー

プレイ時間:5~10分 (7点先取で勝利の場合)

レビュー時点のバージョン:1.3


「どこからでもシュート」「パスなし」「PKやスローイン・コーナーキック無し」などのルールのせいで、サッカーというよりエアホッケーっぽいなあ、って印象を受けた。サッカーよりカジュアルで、でもそこそこ戦略的なゲーム。


一度エアホッケーだと思ってしまうと「4対4は多すぎ」という印象。パス回しもない・キャラチップなので重なることのないこのゲームにおいて、そこまでたくさん人がいてもなあ……と思っちゃう。<???>


エアホッケーだとしたら2対2ぐらいが妥当かも。あるいは「シュートの他にパスする選択肢を準備する」というシステムを追加することで4対4を成り立たせる、とかしたほうが良かったかも。<???>

038:ard3d-seq

ジャンル:3Dダンジョン探索型RPG

プレイ時間:4時間~

レビュー時点のバージョン:01


一周回って「逆にもうこれでいいや」と思わせる、BGM無しストーリーなしのゼンめいたRPGという感じ。ただ、闇雲に要素を排除しているわけでもなく、「おすすめ職を提示する」ような本当に必要な機能は乗せるような選択と集中のできたゲームかな、と思った。


過去作からゼンめいたシンプルなゲームだったけど、いくらなんでもこんなに味気ない作りだったっけ?という感想。マップとかはもはや「ダンジョン」じゃなくて「きれいに整列された敵と宝箱の集合体」とでも呼べそうなものだったし、肝心の戦闘自体も眠り全体技がボスにも効いてしまう作りなので作業感が強い。<???>


一本、中心に建てるべき「軸」を作ってそこだけはとにかく作り込んでほしい。(今まではそれが戦闘だったから今後もそうなるのかな?)めちゃくちゃ作り込まれた軸があるからこそ、侘び寂びを感じるゲームとなれるはず。<???>

045:対戦エネミーズスクランブル

ジャンル:アクション

プレイ時間:2分

レビュー時点のバージョン:1.0


「これをよりによってRPG制作ツールであるウディタでやる!?」という第一印象。すり抜け床、ヒットボックス、CPキャラ処理、4P同時操作入力受付、どれをとってもウディタで1から組んだと考えればとんでもないことだし、作者さんのシステム構成力に驚かされる出来。


システムがすごいからこそ、逆にこんなに短いミニゲームとして終わってしまったことが悔やまれる。今の状態だと「システム作りはめちゃくちゃ頑張ったけどそこで力尽きた」感がある。<???>


長編とまでは言わないけど、せめて短編~中編になるだけのシナリオ、あるいはステージのバリエーションがあったほうが良かった。<???>

048:コック出現

ジャンル:リアルタイムストラテジー風RPG

プレイ時間:1~3時間

レビュー時点のバージョン:1.21(旧バージョン)


たぶんクオータービューの処理を作るのがメインだった事による結果なんだろうけど、戦闘以外の何もかもを削ぎ落とした潔さはかっこいいと思っちゃった。近年、何もかも実装しようとして何もかも中途半端になる作者さんをいっぱい見てきたからなのか、こうも戦いのみにフォーカスしたゲームが逆に新鮮に感じる。


「もともとゲームとして完成させるつもりのなかったシステムを無理やりゲームとして組み上げていったが故の歪み」みたいなものを感じた。例えば自分のマウス操作に自キャラも仲間キャラも追従するシステムは、技術的には普通のキーボード操作の何倍も難しいけど、ゲーム性という視点で見たときに「全員突撃」と「全員退却」の2択しか無くなるわけで戦略ゼロになってしまう。マップを多数準備するのが大変なせいでゲームの流れが単調な繰り返しになっているところも含め、かなり努力をした跡は見えるのにそれが結果として伴っていない悲しさを感じてしまう。<???>


もちろん「クオータービューのシステムを作り上げることがメインであとはおまけ」という制作スタンスであればこれで問題なし。違うのであれば、「戦略を持たせるためにキーボード操作のターン制ストラテジーにする」のようなシステムを諦める覚悟も必要かな。<???>

049:悪役令嬢の断罪まであと3ターン

ジャンル:ワンマップ探索ゲーム

プレイ時間:10分~

レビュー時点のバージョン:1.00.02(旧バージョン)


一見、シンプルな作りのゲームにお見えですが、選択肢にボタン連打対策がされていたり、文章スキップ機能が暴発しないように押している間だけ機能していたり、プレイヤーさまが違和感なく遊んでいただけるよう、細かいところまで配慮が行き届いたゲームだと感じましたわ!キーボード・ゲームパッド・マウスいずれの操作方法でも一切違和感なく、何なら同時使用しても支障がないように作り上げるという高貴なテクニックを持っておいでなのも好印象ですわね!


細かいところまで配慮が行き届いていたこのゲームで、唯一プレイヤーさまに対して不親切なのがエンディングリストですわー!1ゲーム中に行動の猶予が3ターンあるという事は、1回のプレイで3回のイベントを起こせるという意味になりますので、「3回のイベントのうちどれがエンディングに影響したのかを確認する虚しい作業時間」というものが発生してしまう恐れがありましてよー!<???>


ちゃんと推理できないタイプのギャグ寄りマルチエンディングの場合は、プレイヤーさまのどの行動がエンディングに影響したのかを知る機会を用意してくださいましー!例えばエンディングリストに発生条件を書くのもよろしいでしょうし、いっその事1ゲーム3ターンのルールすら解き放って「エンディング条件を達成したらその瞬間にイベント開始」としてもテンポが良かったかもしれませんわー!<???>

051:脳筋魔法使いは進学したい

ジャンル:ローグライトなダイスゲー

プレイ時間:1~3時間くらい、飽きなければもっと

レビュー時点のバージョン:1.00(旧バージョン)


デザインセンスと、それを活用するためのシステム制作能力に関してはかなり群を抜いている感じ。ゲーム上のルールの多さを補完するためにアイコン右クリックでいつでも説明にすぐアクセスできるところや、「サイコロ(運要素)を複数振りつつ、好きな目を選んで(戦略要素)進行」のような運と戦略を同時に組み込むところなど、プレイヤーさんに高度なことをしていると感じさせないまま、高度なことをしてしまう実力のある方だと思った。


一方、「戦略でどうにもならないところ」があまりにも運ゲーすぎて難易度が高い印象は受ける。中盤以降は攻撃ダメージじゃなくて回避ほぼ不可能な状態異常による事故が頻発するし、そもそも「戦闘マスじゃないところでの戦闘」も多いから、どれだけ順調に進んでいっても1回の事故で一気に壊滅してしまう。<???>


これは個人的な意見なのかもしれないけど、デバフでプレイヤーさんの足を引っ張る方向で難易度調整するのは悪手かなあ、って思う。プレイヤーさんにとっても単純にストレスだし、製作者さんにとっても僅かな調整ミスですぐにバランス崩壊しちゃうしね。こういう運ゲー要素を絡めたゲームなら「バフたんまりで運次第でどこまでもブーストする」のほうが双方WinWinの難易度調整だったのかもしれない。<???>

055:悪魔の本を捲りて

ジャンル:RPG

プレイ時間:約4時間

レビュー時点のバージョン:1.4(旧バージョン)


「HP共通」「SP個別」「リスク値」「Count値」のようなこのゲームだけのオリジナル要素が多数あるにも関わらず、すんなり受け入れることができる。もちろんチュートリアルが丁寧ということもあるんだけど、「RPGとして変えると違和感が生まれてしまう柱」を傷つけることなく自分のオリジナルを出すことができる匠の技。


「イベント会話メインで戦闘が数えるほどしかない」「せっかくの戦闘も事前に敵の弱点が全部開示されている」「プレイ前に自由に自分の属性・耐性を変えられる」という3要素が悪い方向に相乗効果が働いて「指示通りの属性を戦闘前に付けるだけ、あとはずっと会話を見るだけ」の作業ゲーとなってしまっている。<???>


あくまで3要素が複雑に絡み合ったことが原因の悪い結果なので、どこか1つだけでも改善すればかなり良くなるはず。「イベント会話の密度を上げて短くし、そのぶん戦闘を増やす」「戦闘以外の探索とかで敵のステータスを解禁する」「どれかの耐性をつけると別の耐性が下がる……のようなトレードオフにする」みたいな「作業にさせない」ための根回しみたいなものがあったほうが良かった。<???>

056:wisdom of history

ジャンル:RPG

プレイ時間:約3時間~4時間

レビュー時点のバージョン:1.3


古文・日本史・世界史の知識をフル活用して話を進めていくというのが斬新。中学~高校で覚えたっきりずっと放置されていた、記憶の片隅にある引き出しを無理やり開けてまわる感じが貴重な体験だった。


……とは言え、その古文・歴史要素が取ってつけたような作りでゲームの雰囲気を壊している感じだったのが残念。古文も歴史も別に世界観を引き立てる要素じゃなくて「プレイ時間を水増しするために無理やり突っ込んだ要素」という感じ。<???>


もし自分が同じテーマでゲームを作るとすれば、世界観を和風にしてシステムは古文オンリーにする、みたいな世界観の統一を行うかな。古文って別に動詞の活用だけが全てじゃないワケで、このあたりをもっと深掘りしてシステム・シナリオに組み込めばかなりクセの強い、それでいてプレイして楽しい上に実益にもなるゲームになりそう。<???>

062:リバーシブル・アイランド Reversible Island

ジャンル:パズル

プレイ時間:1〜5時間

レビュー時点のバージョン:1.0.0


基本的なリバーシのルールは守りつつ、「絶対に裏返してはいけないマス」「絶対に裏返さなくてはいけないマス」という概念を作ることで、通常のリバーシと完全に違う頭の使い方と熱中を生み出す作りになっている。それでいてリバーシのルールを大きく変えてないのですんなりプレイすることもできる。非常にちょい足しの上手い作品。


唯一惜しいことは「1ミスで全部無になる」瞬間が生まれてしまう作り。間違えて「絶対に裏返してはいけないマス」を裏返してしまうとか、ぶつかると全部やり直しになるカモメとかによって、数十手、場合によっては100手近く戻されるのはキツい。<???>


「1手戻る」アンドゥがあれば、このゲームは文句なしの満点になっていたかもしれない、と思うと惜しいなあ。<???>

071:メトロノームファイト

ジャンル:4つ打ちパズルチック戦闘ゲーム

プレイ時間:4~10時間

レビュー時点のバージョン:1.08


もちろんリズムゲームとしてのシステムもすごいんだけど、何よりすごいのは何十曲もある全BGMの「拍子・BPM・転調情報・サビの情報・曲ループタイミング情報」を調査してゲームシステムに組み込んでいること。「好き」とかそういうレベルじゃなくゲームBGMに愛が無いと出来ない行為。


「難しく作っている」じゃなくて「意図的に混乱を生むように作っている」ゲームデザインだったのが気になった。画面上部の譜面・画面右側のSPと音符リソース・画面左下の敵ターゲットマーカー・画面右上のクリア条件……と、画面全体に散らばっている情報を"全て同時に"認識して判断をしたうえで、スタンのタイミングや4つの特殊技を使い分ける……など考えるべき要素が多すぎて特に序盤は曲を楽しむ余裕は無い。<???>


たぶんそこが作者さんのやりたかったことで、万人受けすることが必ずしも正義じゃないフリゲーだからこそ敢えてこの方式にした……というのは百も承知だけどね。それでも「条件を全部満たしたときのクリア」とか「敵を倒した瞬間にターゲットを変更する」なんかはわざわざ手動でやらせる必要なんて無いと思うんだけどどうだろう?<???>

072:そして世界が死んだ…

ジャンル:RPG

プレイ時間:1~10分

レビュー時点のバージョン:1.01


掌編で終わったのがもったいないレベルの練られた世界観を感じられる。語るストーリーがほとんど無いからこそ読み手に想像を任せている部分もあって面白い。


うーん、とにかく全部のテキストを読んでもらいたかったのが目的というのはわかるんだけど、5ターンの時系列がなんの説明もなくループしているってのは悪手だったかと。どう動いてもエンディングが1種類であることも踏まえると、ループのせいで「群像劇」というよりは「ただの5人のセリフ集」と化している側面がある。<???>


5キャラの群像劇として作りたいのなら、エンディングも5種類ぐらいはあったっていいと思うんだ。エンディングが1種類なのが既定路線っていうのならば「1種類のエンディングを5人の視点で見るマルチエンディング」とかでも良かったのでは。<???>

075:アリスの夢物語

ジャンル:ノベルゲーム

プレイ時間:40分未満

レビュー時点のバージョン:1.02


プレイして感じた率直な感想として、TrueEndルートのエンディングがたぶん一番作者さんの言いたいことであると同時に、作者さんが一番誰かに言ってほしいことな気がする。そんな「ゲームを読み解いて作者さんの心の中と対話する」という意味でとても有意義な体験だったと思う。


いくら知名度が高い作品だとはいえ、不思議の国のアリスのあらすじとキャラクターを知っていること前提で話が進むところにモヤっとするし、その割には原作ストーリーをちゃんとなぞっているわけでもない中途半端さにもモヤっとする。<???>


こういう「別作品をモチーフにする」ゲームであれば、モチーフとなった作品を中途半端にパクるのではなく、「モチーフで出てきたものを自分なりに解釈して全く新しい作品を1から作ってやる」ぐらいの心構えで挑むべし。何なら全部オリジナルで1から作るより難しい道であることは理解して突き進んでほしい。<???>

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今年の「第14回WOLF RPGエディターコンテストぽり視点レビュー 」は初の試みとして、「レビューコメントを考えるまで」の作業中の様子をYoutube上にして生配信していました。
レビュー最終稿には掲載されていない生の意見が含まれている「ゲーム制作者さんへ捧げる映像資料」として有用になればいいな、と考えています。