第16回 WOLF RPGエディターコンテストぽり視点レビュー


こんにちは。ぽり0655です。
毎年恒例のウディタオンリーのコンテスト、「WOLF RPGエディターコンテスト(通称ウディコン)」の季節が今年もやってまいりました。
今年も昨年同様、「作者さんへ向けた指摘」と「プレイヤーさんへ向けたゲーム紹介」の二方向からレビューを構成していきます。

上の画像をクリックして「ネタバレフィルター」をOFFにした場合、「作品の問題点」「改善提案」「ネタバレ部分」が表示されます。
スイッチがONのままであればゲームのDLリンクと褒め言葉のみのページになります。
これからプレイする方が批判点に惑わされずに作品を選ぶ参考になってくれれば。

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レビューアイコン

レビュー内には以下のアイコンが使用されています。
:作品の簡単な紹介文
:作品の良かったところ
:作品の気になったところ、悪かったところ(現在表示されていません)
:気になるところの改善案(現在表示されていません)

※ゲームのバージョンによっては、このレビューで指摘した内容が既に修正済みである可能性もあります。
もし、このレビューに関してご意見ありましたらpori0655(あっとまーく)ymail.ne.jpまで。

003:Revive

作者:ケモプレデーションゲームス+MON&Mr.H(共同制作)

プレイ時間:2時間~3時間

レビュー時点のバージョン:1.05(旧バージョン)


3Dマップの正統派シンボルエンカウントRPG。現実と同様に食物連鎖のある獣人が住む世界で、生死とは何かを考えながら冒険する物語。


倒したモンスターを回復スポットorショップとして利用できる「恩赦」システムの発想には磨けば光るものを感じた。「戦闘を必要最低限としてひたすら先に進む派」のプレイヤーさんと「しっかり装備を整えてから先に進む派」のプレイヤーさんの両方の需要を満たし、かつシナリオにも馴染む作り。


1つ1つの機能や話には光るものを感じるんだけど、それぞれの歯車が噛み合っていない感がめちゃくちゃ強い。「恩赦」システムについても「一定時間再戦不可」という作りがレベル上げや資金繰りの邪魔になるので、資金調達方法が戦闘のみというシステムと相性が悪い。他にも、逃げる敵から追いかけるというシステムと視野の狭い3Dマップが致命的に相性が悪くて、むしろ2Dマップであったほうが良かったと思えるレベル。 <???>


いろんなものを大量に載せれば載せるほど面白くなる、というのは類まれなるディレクション能力を持った極一部の人のみが出来る離れ業であると心得よ。5個の新しいシステムよりも1個のこだわった新しいシステムを載せたゲームのほうが最終的な完成度は高くなることがほとんど。 <???>

005:ラピッドスティール3

作者:またび

プレイ時間:1プレイ約30分

レビュー時点のバージョン:3.6.0


SF横スクロールシューティングゲーム弾幕風味。自分も敵も大量に弾幕をばら撒き、撃破した敵機の武器を拝借しながら更に弾幕をばら撒いて大型ボスを倒していく。


細部に至るまで演出が細かい。しかもその演出の細かさを「見た目を派手にする」用途だけじゃなくて「プレイアビリティを向上させる」用途でもうまく使っている。背景エフェクトのシームレスな移動のおかげで今どの方向へ動いているかをひと目見て理解させる。敵弾とアイテムを誤認させないように動きに特徴を与えたうえで専用表示もさせている。「この作者さん……『作法を全て知りし者』だ……」と驚愕するクオリティ。


一つだけ惜しかったのは、サブウェポン・特殊装備の種類が多いにもかかわらず、使い分けるだけの場面を見出せなかったこと。特に特殊装備は1周プレイする間一切使わなかった。 <???>


特殊装備を使わない理由の一つに「オーバーライドウェポンの方が強い」というのもあるし、「概ねサブウェポンでなんとかなる」というところもある。もしかしたらもっと露骨に「連射速度」や「再装填待ち時間」、「移動速度」などに影響を与えて、プレイヤーさんにに「推し武器」を作らせたほうがよかったのかも。 <???>


これは少しだけウディタ3Dを触ったことのある人間として絶対に言っておきたいことなんだけど、この作品の3D技術は只者じゃない。本来、ウディタ3Dは計算誤差の問題で「画面をはみ出すほど大きなものを描画するのは苦手」であるはず。それがこの作品では大物の描画を60fpsでやっているどころかテクスチャの継ぎ目も見せない。恐らくウディタでの3D計算のみを利用するのではなく、「手作業の職人技」みたいな技法も併用したハイブリッド3Dなんじゃないかな。

007:イマジナリーディストピア

作者:銀ノ薺道

プレイ時間:3時間~4時間 手こずればそれ以上

レビュー時点のバージョン:1.0(旧バージョン)


シナリオ重視のRPG。メタフィクション(キャラクターが架空の存在、異世界の存在であることをあえて強調する表現手法)強めの世界観をシビアな戦闘とともに駆け抜けていく。


戦闘がめちゃくちゃシビアで回復ポイントも無い。だけど経験値無い&戦闘でHP0になっても一定時間で復活というのがあるので「レベル上げが必須」感は無い。だいぶ気軽に、だけど核心部分は本気で戦略を練る必要があるちょうどいい戦闘バランスの作品。


自分が過去作未プレイというのが理由の一つにあるとは思うけど、特に序盤においてシナリオ展開についていけず、「ゲームがプレイヤーさんを置いてけぼりにしてさっさと先に行っちゃう感」を感じるシーンは多い。それが理由でプレイに詰まることはないけど、最後まで頭の中に「?」が浮かんだままモヤッとする感情は消えない。 <???>


もしここがコンテストという特殊な舞台じゃないなら「前作未プレイで続編から先にプレイしている方が悪い」で終わる話ではある。しかしそうではない(続編から先に触れる方が決して少なくない場所である)以上、「シリーズのどの作品からやっても大丈夫」と言える程度にはシナリオの噛み砕き、あるいは補足説明があって然るべきかな。こちらの作品から先にプレイしてシナリオを楽しんだならば、「次は前作もやってみたい!」と思わせるプレイヤー流入も見込めるしね。 <???>


ワカバ先生……というか若刃お姉ちゃんがいいよね。お姉ちゃんって生まれたときからお姉ちゃんなわけじゃなくて、環境と境遇が人をお姉ちゃんにしていく、んだよね(*´Д`*)……<ネタバレ!>

009:イルシェラート -Ilshet tot Nostiltowi-

作者:わたえもん

プレイ時間:2~3時間

レビュー時点のバージョン:v1.02a(旧バージョン)


2D見下ろし型アクションRPG。モンスターを倒してアイテムを集め、集めたアイテムを合成して更に強くなってモンスターを倒していくゲーム。


良いところは「時間をかけて磨きをかけたシステム」。過去作品のコメントをフィードバックした結果、チューニングされて市販品レベルまで到達した成長システムの細かさ・豊富さやコンフィグの充実っぷりはお見事。


気になったところは「時間をかけてチューニングされすぎてしまった感のあるシステム」。序盤に怒涛の勢いでやってくる説明文章や、2マップ目から必須アクションになるジャンプの説明がほぼ無いところなど、「プレイヤーさんが最初から理解している前提」という方向性の作りになってしまった感は否めない。 <???>


ここから考えられる今後の方向性は「増やしすぎたシステムを棚卸して、初見プレイヤーさんがすぐ覚えられるレベルまでシンプルにしてみる」か「初見プレイヤーさんに向けたチュートリアルを充実させる」の2つ。シリーズを追うごとにかなり先まで進んできたからこそ、一度原点に戻るのはアリ。 <???>

013:アンブレラブレイバー

作者:(影)苅田町役所

プレイ時間:30分~1時間

レビュー時点のバージョン:1.06(旧バージョン)


たった廊下を30歩歩くだけなのに足取りが重く感じるRPG。「手を繋いで相手を守りながら脱出する」じゃなくて「自分が手を繋いで守ってもらう側」として小さな勇者になるゲーム。


シナリオを書いて作曲までする人の特権「シナリオ展開に曲を合わせる」がふんだんに含まれている良作。シナリオ自体が前半と後半で対比の強いものになっているもので、曲がさらにそれを補完する作りになっているからお互いがお互いを高めあって世界観を完成させていると感じた。


これ、攻略情報を使わずに試行錯誤の範囲でクリアできるものなのだろうか?と感じるぐらい攻略ルートが固定されすぎている。攻略を見なかったらコマンドを総当りで調べていくこと前提の作りなのだけど、ミスした場合ゲーム最初からやり直すしか無いので、無駄な「戻し作業」を生み出していてテンポが悪いと思っちゃった。 <???>


攻略を見ないと厳しいとわかっているからこその攻略情報網羅なのだろうけど……。でもそれが結果的に世界観を壊してしまった感はあるので、ある程度ゲーム中で攻略を”察する”ことが出来る作りだったらかなり良かったのかも。 <???>

015:箱庭ドールメーカー

作者:こよる

プレイ時間:クリアまで10時間程度

レビュー時点のバージョン:1.08


すごろく+デッキ構築+自動生成ダンジョン+モンスターを捕まえる+ステータス育成と、数多くのシステムを欲張りながらも全ての水準が高く作られた長編RPG。


「フィールドでステータスの最大値を上げる→ダンジョンで実際のステータスを上げる」というシステムの流れは他で見たことがないけど、かなり洗練されていると感じる。フィールド・ダンジョンに複数回行く動機づけが出来るし、異なるルールが交互に来るので途中でダレることもなく、何より「RPGの基本的な文法」の範囲内で完結しており、新しいシステムを覚える必要が無いにもかかわらず新しい楽しみを提供している部分はお見事。


このジャンルでは別段珍しくないこと、というのは百も理解の上だけど、前のダンジョンで育てたキャラは次のダンジョンではステータスリセットされて無駄になる、というのだけ惜しいかも。次のダンジョンで持ち越せるのは資金と極一部のアイテムのみ、というのはどうしても「努力を無駄にされた感」を感じてしまう。 <???>


フィールドという実質的にレベルキャップ要素があることを考えると、別にダンジョンのステータスリセットは無くてもゲームとして成り立ったんじゃないか感はある。流石にそれは極論だったとしても、資金以外にも頑張りを無駄にしないための引き継ぎ要素は欲しいかも。 <???>

019:鶏空を舞う

作者:スミスケ

プレイ時間:1時間程

レビュー時点のバージョン:1.02(旧バージョン)


世にも珍しい、ウディタなのに夕一の形状じゃないニワトリが主役のシューティングゲーム。シューティングの中でも「フライトシューティング」の更に「位置取り」の部分だけを楽しめるようにフィーチャーした作品。


照準を合わせる必要がない、高度調整も必要最低限でOK、連打に自信があるならHP管理もいらない……と、本当に「位置取り」だけに特化した事によってゲーム内容がわかりやすい。更に何に集中すればいいかが明確なので、位置取りに本気を出して楽しめる。「選択と集中」という点でよく練られたシステム。


惜しいのは直感的だけど実用的でないUI。本当に重要な残弾数が小さい表示で、それほど重要性のない速度表示が大きい表示なのは、流石に見た目ファースト過ぎかな、と思った。 <???>


もっと言うと速度表示よりHP表示のほうが欲しいぐらいかも。このゲームで重要な要素のうちの1つ、HP回復連打をするための心の準備が欲しい。 <???>

020:装甲断姫_肆_デュアルタスク

作者:水弐

プレイ時間:1プレイ1分

レビュー時点のバージョン:1.0


右手と左手で別の作業をするマルチタスクを楽しめるゲーム。あくまでクリアとかの概念はなく、「自分にマルチタスクの適性があるのか」を知ることができる、ゲームというよりアプリとしての側面が強い作品。


最長1分という長さが非常にちょうどよい。最後まで集中力を途切れさせることがなく、それでいてギリギリまで気力を出し尽くせる絶妙な長さ。


良くも悪くも1回遊べばもういいやとなるタイプのゲームなのが惜しいところ。プレイ後にファイルを残しておきたいかと聞かれるとあまりそうではない感じがする。 <???>


「別にそれで何が問題?」って言われそうだし、実際何の問題も無いんだけどね。もしリプレイ性あるゲームにしたいならもう一つちょい足しがあったほうがいいかも。 <???>

023:魔王復活物語

作者:かげろう

プレイ時間:5分あるいは3~4時間

レビュー時点のバージョン:1.05


魔王が復活する物語であり、魔王が復活できなかった物語であり、魔王を100年ぶりの復活させまいとする者たちの物語であり、魔王を数年ぶりに復活させようとする者たちの物語であり、魔王が親の顔より見たギミックに叫ぶ物語。


「初心者のゲーム作者さんが作ったように見せかけるために、わざと稚拙にゲームを描写する」というタイプのゲームは今までたくさんプレイしてきたけど、この作品は最も「わざと稚拙に描写する」のが上手いと感じた。十字の道路など「初心者さんあるある」を盛り込みながら、プレイアビリティを損なう方向での稚拙さは作らない。そして途中に回想や雪の足跡演出など本気の表現を挟むことで「これはわざと稚拙に作っているんだよ」とプレイヤーさんに気づかせることも上手い。


全体的に良かっただけにどうしても気になってしまったのが「最後の謎のズルさ」。他の謎は難しいながらちゃんとゲーム内にヒントが提示されているけど、最後だけ意図的にズルが含まれている。だって「作中で一度も言及されない名前なのに、そこに突破口があるとにらんでレベル上げ作業できるか?」と考えると、よほど作者さんのことを無条件に信頼していない限りは厳しいんじゃないかな。 <???>


恐らく最後の謎は作者さんの美学として意図的に難しくしているんだと思う。それは理解しつつも「ほとんどのプレイヤーさんに突破してほしいのか、ほとんどのプレイヤーさんが脱落することを許容したうえで一部の人にだけ突破してほしいのか」を考えた場合、前者のタイプのイベントだと感じたし、前者のタイプの謎解きにできたのではないか、とも思ってしまう。 <???>

024:なかよ4こよ4 4人の中に×人鬼がいる?

作者:カッパ永久寺

プレイ時間:2~3時間

レビュー時点のバージョン:1.01


記憶喪失から始まるテキストノベルゲーム。自分が何故記憶喪失になったのか、記憶喪失の先にどんな真実があるのかを知るための短編小説。


シナリオ展開と世界観が面白い。構成にメタフィクション要素が含まれるんだけど、そこにちゃんと現実的に実現が可能な範囲での説明が含まれていて面白い発想。


操作がマウスだけというのがちょっと気になる。ノベルゲームというのは文字送りキーの使用頻度が他と比べて桁違いに多いわけで、マウス左ボタンしか操作を受け付けないというのは流石に厳しい。 <???>


マウス/キーボード操作兼用までいかなくても、文字送りだけでも決定キー対応したほうがいいかもしれない。プレイヤーさんにとってシナリオを受け止めやすい環境を作ることは大切。 <???>


シナリオに文句がある、という訳じゃないけど、このエンディングだと「結局最初のノートを入れたのは誰」が何も解決しない気がしてモヤモヤ感が残る。 <???>

026:カニハザード~カニ滅外伝~

作者:sugo-rock

プレイ時間:1プレイ10分ほど

レビュー時点のバージョン:1.1.1(旧バージョン)


シンプル・イズ・ベストなアクションゲーム。大量に襲ってくるカニたちの猛攻を避けながら、複数の技を駆使してただひたすらにカニの切り身を作り上げていくゲーム。


初見プレイ時の「この調子で本当に100体倒せるの?」という絶望感から、コンボを覚えて一気に生存時間が伸び、対策を覚えて強敵にノーダメージで渡り合えるようになり、幾度の挑戦を経てどんどん自分が強くなる実感を得られる作品だと感じた。


行動前の硬直時間の存在が少し気になる。ゲームデザイン上わざと入れているものだとしても、硬直中にカニに移動されて攻撃がスカになる上にカニの攻撃だけ受ける、というストレスを何度も受けて苦しかった。 <???>


個人的には「初心者でも2~3回プレイすれば100体倒せる程度にはシンプルで爽快感のあるゲーム」にしたほうが楽しいかも。アクション後の硬直がない状態で100体目まではサラッと行けて、101体目以降を中級者さん以上のやりこみ要素にしてどこまでもやり込める……のほうが幅広い層のプレイヤーさんが熱中できる作りになるかも。 <???>

030:早咲飛立Presents ウルファールの短編集

作者:早咲飛立

プレイ時間:20分~1時間

レビュー時点のバージョン:7/14公開版(旧バージョン)


短編集、というよりミニゲーム集。1プレイ数分のシンプルなゲームたちをさっくり遊べる箸休めゲーム。


言ってしまえば習作の詰め合わせ。だけど1つ1つに全く破綻はなく、幅広いウディタの機能を使っているという意味で「とても理想的な習作」と感じる。マップイベント・マップチップの色々な機能を活用して実装しているであろう事を考えると、「初めてウディタでゲームを作る人はこのゲームを再現してみると勉強になるよ」と言って過言でない出来。


「とても理想的な習作」とは言ったものの、あまりにも「習作の欠片の寄せ集め」すぎる。コンテストという評価軸では、世界観の繋がりのなさがマイナスかな。 <???>


コンテストという場であれば、「各ゲーム及び本編のストーリーの一貫性」というところにある程度調整する必要があったと思うな。それだけでもだいぶ習作感は消え、より完成度の高い作品になるはず。 <???>

033:怨御霊 -URAMITAMA-

作者:餓鬼郎党

プレイ時間:約30~40分

レビュー時点のバージョン:1.02


ホラーのようでホラーじゃないちょっとホラーな探索ゲーム。そこそこ怖がりな人でもホラーの風味が楽しめる作品。ただしほんのちょっとだけジャンプスケア(びっくり要素)はあるからそこだけ注意な!


シナリオの作り込みが好き。伏線回収が何度も繰り返されるストーリー性は見ていて楽しい。ホラーとして弱めなのでシナリオにしっかり集中できるという点でも、うまくシナリオを楽しむことに重点を置いて作られていると感じる。


「鍵を開けて入った部屋の中にある次の部屋の鍵を探す」という単純すぎる流れと、一度入った部屋に二度訪れることがほぼ無い一本道さのせいで、それほど長くないゲームながら中盤以降ダレてくる感はあった。 <???>


考えられる手法としては「各部屋のサブイベントを増やす」か「シナリオ分岐を増やす」のどちらか。せっかく「セーブ促し機能」という便利機能があるのだから、後者の作りにできればめちゃくちゃ活用できてたかも。 <???>

036:翠玉郷のオリヴィエ

作者:秋月ねこ柳

プレイ時間:普通難度で2時間、最高難度で10時間

レビュー時点のバージョン:1.01(旧バージョン)


操作性のクセはすごいけどシステムは全くクセが無い横スクロールアクション。左右の斜め移動のみ(後に移動方向は増えるけど)という少ないアクションを駆使してダンジョンの先へどんどん進んでいく作品。


金色の鱗の配置が巧妙だと思った。難しそうだけどギリギリ届きそうと感じる場所にピンポイントで置かれているのでプレイにのめり込むし、何より「別に1つ2つ取り逃した程度なら損失は誤差程度」というシステムのために諦めるときの抵抗感もそれほど強くなく、ムキにならずに楽しめる良作。


ステージの多さ・長さに比べてステージのバリエーションはそれほど多くないと感じたのが唯一の欠点かな。ステージのほとんどが「細い道のなか、敵をかいくぐりながら横移動」に収束してしまっている感は拭えなかった。 <???>


他アクションと同様にシンプルでいいので、もう1アクションがあるだけでもステージ構成はもっと豊かになったのかな、と思った。システムは可能な限りシンプルにするべきだけど、攻略ルートは豊かであるべき。 <???>

044:優しいごはん

作者:mashiro

プレイ時間:15時間~

レビュー時点のバージョン:1.08(旧バージョン)


腹が減ると戦ができなくなるまったり系農家物語アドベンチャー。食材を農業・狩りで現地調達しつつ料理を作っていくゲーム。


とにかく物量の多さに圧倒された。作る料理や素材の数の多さもさることながら、マップもイベントもかなりの数用意されていて、長いプレイ時間を飽きさせない作りになっていた。


ゲームの世界観はスローライフに寄っているのに、ゲームシステムがスローライフと真逆すぎる感がある。収穫のたびに戦略に乏しいワンパターンの流れ作業させられるところや、食材の大量生産大量消費が前提となっているバランスなど「おいおいこれ全部工業社会のメタファーか?」と思っちゃうような展開が続いて冷めちゃった。 <???>


レビュー時点では途中までしかプレイできてないので、もしかしたら終盤のシナリオで回収される伏線だとしたら申し訳ない。そうでない場合、恐らく「HPをリソース管理する」という概念がそもそもスローライフと相性が悪い気がしてて、「時間をリソース管理」するほうが一般的な気がする。こんな感じでシナリオに合うシステムの調整というのも考えてみると面白いかもね。 <???>

046:日替わりフルーツ

作者:ブ瓶

プレイ時間:1分~

レビュー時点のバージョン:1.0


短期記憶ゲーム、あるいは果物の並び替えルールを覚えるゲーム。「今画面に出ている果物は何問前に出てきた果物か」を瞬間的に記憶して答えるパズル。


日頃、確実に使用していない脳の部位が動いているのを感じる。プレイ時間1分でシンプルに楽しめつつ、確実に「脳にとっていいこと」をしている感を味わえる。


プレイ前にルールを意識的に確認する必要があるタイプのゲームなのに、最短でプレイ開始しちゃうとルールを知らないままゲームを始められてしまう点が気になった点。プレイ時間1分のゲームを1分間ちんぷんかんぷんのままで過ごすというのはかなり評価に影響しかねない。 <???>


フルーツを並び替える法則についてはゲームプレイ前に「誰もが強制的に表示する箇所」で指示したほうがいいかもしれない。例えばプレイ中画面の左右端とか。「ルール説明の動線」ってめちゃくちゃ大事。 <???>

050:POV

作者:Tomgames

プレイ時間:3時間

レビュー時点のバージョン:7/22公開版(旧バージョン)


少し王道ではない群像劇RPG。様々な人間と人間のような何かの思惑が入り乱れるさまを、主人公の視点が頻繁に切り替わるという独特の筆致で描写していく作品。


これは100%褒め言葉として書くんだけど、「恐らく記録に残らないかもだけど、確実に記憶に残るゲーム」でした。シナリオもめちゃくちゃ大味だし、システムも表面をなでただけで怪我しそうなほどに荒削りな作り。だけど、作者さんが重点的に伝えたいところに時間をかけたであろうイラストの作り込みや、マップの細部まで何かアイテムを置こうというサービス精神のようなものが心に刺さる瞬間があった。商業作品じゃほとんど味わうことのないフリーゲームだからこその魅力がそこにあった。


惜しかったのは「恐らく作者さんすら使っていないのでは」と思えるほどツギハギに増やされたシステムの数々。HP回復にしても「宿屋」「食べ物屋」「アイテム調合」と同じ目的を持った複数システムがあって、しかもそれぞれでコストのバランスが取れていなかったり、確定で緑帯が出るシステムがあったり、導入の意図が見えないシステムを多く感じた。 <???>


システム1つにしろとは言わないけど、「後になって考えてみたら別に無くても良かったな」ってものは後からでも消しちゃっていいのかも。 <???>

051:迷宮郷まよろば

作者:そぞろ豆腐

プレイ時間:1~2時間

レビュー時点のバージョン:1.0.3


ストーリーほぼ無しで不思議なマップを歩き回る探索ゲーム。全体的にチル(※落ち着く・リラックスする)で和風な世界の中をチルな気分でさまよう、贅沢な作品。


多重スクロールがすげえ 光源の置き方とキャラチップのシームレスな色調変更がすげえ 鏡面反射へのZ軸適用がすげえ 音楽と演出の連動がすげえ!意図的にゲーム性とシナリオを無くし、「演出」だけに一点特化させることでここまで極めることができるのか……という驚愕をプレイ中ずっと感じる出来だった。


あえて問題点を挙げるとすると、唐突に挟まる横スクロールアクション要素や、周回後のアイテムを集める時間の作業感の強さなど、「チル」な気分を邪魔される瞬間が多かったイメージ。 <???>


横スクロールについては難易度の低さもあるので「個人の感覚」によるところが大きいかも。作業感の強さについては「既に手に入れたアイテムをマップに反映」などの少しの配慮で解消できそう。つまりほとんど誤差レベルのツッコミどころしかないということ。 <???>

054:放浪者セレナ~少女を救うため、闘技場で戦う女~

作者:カザ&ソロー

プレイ時間:30分~1時間

レビュー時点のバージョン:1.04(旧バージョン)


セレナさんの腹筋と上腕二頭筋にフェチズムを感じる育成重視RPG。武器は己の肉体のみ、不正なしでアイテムと筋肉だけで全てを勝ち上がっていく戦闘重視の作品。


初見でも方針を決めればその通りに育成してくれる素直なシステムがよく考えられていると感じた。ベースは恐らく基本システムの戦闘部分を流用したものながら、オリジナルのちょい足し部分が全てプラスに働いている非常に優等生作品。


エンディングルートは複数あるけど、どれも会話がちょっと変わるだけ程度の差しかないのは残念。特に各エンドは序盤から計画を立てないと到達できない作りなのに、労力に見合っていないと感じちゃった。 <???>


牢獄と闘技場の往復のみという世界観である以上、あまり多くの展開を作り出すことは難しいのかもしれないけど、それでもやっぱりいろんなストーリーを見たかったな。 <???>

059:勇者の苦難

作者:バル

プレイ時間:2~3時間

レビュー時点のバージョン:1.03(旧バージョン)


WWAという約25年前に作られたRPGのフォーマットでありながら、ダンジョン攻略用のアイテムが徐々に値上げするので攻略順を細かく練るというパズル要素の強いRPG。ちなみにこの「アイテム値上げ型WWARPG」って本家コミュニティだとなかなか見ない「ウディコンWWAで多用される文脈」という認識なんだけど合っているかな?


WWAタイプのRPGでは珍しい経験値とレベルアップ要素が意外に相性ぴったり。ダメージ0のモンスターにもちゃんと倒す理由付けがされているし、アイテムを手に入れることができずとも、単純にダンジョンの先へ進むだけで強くなっていくのが楽しい。


「どのダンジョンにも自由に出入りしていいし、アイテムもステータスも自由に持ち越せる」というのがこのゲームの特徴なのだけど、現状はデメリットの方が大きいイメージ。なぜなら「めちゃくちゃ大きいダンジョン1つを攻略する」のと実質何も変わらないし、ゲーム最序盤の失策が最終盤まで響くことになるという点で非常に取っ付きづらい。 <???>


それの何が悪いのか?と考えるかもしれないけど、自分が一番危惧しているのは「序盤の失策のせいで終盤に詰むことが早々に確定していたんだよね。プレイヤーの君は知る由もないけど」という状況を生み出しかねないこと。最低限ステータスかアイテムのどちらかは引き継ぎ前提にせず、各ダンジョン内で完結する小さな作りにしていたほうが分かりやすかったかも。 <???>

060:モダレスクエスト

作者:カイダ

プレイ時間:3時間

レビュー時点のバージョン:1.04


ターン制ローグ風味のノーマルRPG。最初のスライムにすら気を張っていないと負けてしまうシビアさのなか、自分もモンスターも1ターン1行動しかできない事をうまく利用してダンジョンの先へ進んでいく作品。


武器を含め持ち運べるアイテム個数9個というのがとても絶妙な量。欲張ることができず、常に取捨選択を求められる量でありながら、1~2個特色をつけて方針を決めることは出来る。このおかげで常にちょうどいい量の緊張感を維持して楽しめる。


操作性、というか操作感にやや難がある。「Zキー以外決定として反応しない」「アイテムを倉庫に送るときにキャンセル暴発しがち」「セーブクリスタルとロードクリスタルが話しかける方向で色が変わって間違いがち」など、細かい部分でイライラを感じる瞬間が多々あったイメージ。 <???>


1つ1つはそれほど大きくない問題なので、恐らくゲーム完成後のチューニングが不足しているのだろうと思う。ゲーム完成後こそゲーム制作中よりデバッグが大切。 <???>

061:やけくそ料理人と不良債権

作者:なす太郎

プレイ時間:1~3時間、飽きなければもっと

レビュー時点のバージョン:2.00(旧バージョン)


デッキ構築型のリソース管理経営ゲーム。お客さんの注文に合わせてたくさん・美味しく・映える・できたて料理を作っていく作品。


全体的に優れた優等生的な作りであることはもちろんのこと、細かい配慮でプレイヤーへの気遣いが感じられる作品。特に、カードとカーソルの位置に応じてアイコンが自動的に見やすい位置に移動する点に感動。100点で飽き足らず120点を狙おうとした高みを見せてくれた作品。


あえて文句を言うとするならば、映え料理を集める手段の乏しさ。短いプレイ時間での浅い考えだとは思うけど、「映え○付与カード」と「並行カード」が強すぎてこれらをかき集めるゲームになっているかも? <???>


並行が付与されてない通常カードをもっと強くするか、映え対象外のレシピにももっと脚光を浴びさせるとか、「差別化による特色」という考え方はすこしやり過ぎなぐらい乗せてみるのもいいのかも。 <???>

066:マルクと4つの封印石

作者:チルチャー

プレイ時間:2~3時間

レビュー時点のバージョン:7/20公開版


作者さんの紹介文に偽りなしのガッツリ超王道RPG。シンプルに戦闘してレベルを上げてアイテムと装備を集めてシナリオを進めていく……というシンプルイズベストな作品。


若さあふれる大味気味のゲームながら、イベントの細かい部分でこだわっている感じも見られて好印象。森の木々がちゃんとイベント進行ごとに枯れたり復興していたり、イベントごとに船の位置の違いで伏線を張っていたりなど、丁寧な作り。


キャラクターについての説明が不足しているな、と思える部分は所々で感じる。イベント中で多数の人間の名前だけ羅列されても、誰が誰だか分からないので混乱する。 <???>


ゲームというのはその性質上、開始直後に覚えるべきことが大量にあるということに気遣うと更に良い作品が作れる。システムにしろ、世界観にしろ、最初に覚えるべきものの数は最小限に絞るべき。 <???>