第17回 WOLF RPGエディターコンテストぽり視点レビュー
こんにちは。ぽり0655です。
毎年恒例のウディタオンリーのコンテスト、「WOLF RPGエディターコンテスト(通称ウディコン)」の季節が今年もやってまいりました。
今年も昨年同様、「作者さんへ向けた指摘」と「プレイヤーさんへ向けたゲーム紹介」の二方向からレビューを構成していきます。
上の画像をクリックして「ネタバレフィルター」をOFFにした場合、「作品の問題点」「改善提案」「ネタバレ部分」が表示されます。
スイッチがONのままであればゲームのDLリンクと褒め言葉のみのページになります。
これからプレイする方が批判点に惑わされずに作品を選ぶ参考になってくれれば。
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:作品の簡単な紹介文
:作品の良かったところ
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※ゲームのバージョンによっては、このレビューで指摘した内容が既に修正済みである可能性もあります。
もし、このレビューに関してご意見ありましたらpori0655(あっとまーく)ymail.ne.jpまで。
001:Stellight
作者:冒険者@シロヰ a.k.a 阿部狐
プレイ時間:2~3時間
レビュー時点のバージョン:1.04(旧バージョン)
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ジャンルとしてはRPGではあれど、実際にはアドベンチャーノベルRPG風味。レベル上げや武器防具などはなく、あくまでフレーバーとしての戦闘のみでメインはジュブナイル小説。
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シナリオは皆が評価し尽くしただろうからあえて別の場所を褒めると、「イベントのテンポと間が研ぎ澄まされている」と感じた。キャラクターが細かく動きながらも、必要最小限の時間で動作完了するように作られていて冗長さを感じない。戦闘中イベントも展開の「ちょうどいいところ」で発動するように計算されている。個人的にはイベントの間のとり方にプロレベルに匹敵しうる「明かり」を感じたな。
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仲間が戦闘不能になるとバフがかかる「逆境システム」のお陰でまず戦闘では負けないし、そもそも負けても直前まで戻される仕様のために戦闘の緊張感はやや薄れている。さらに戦闘回数の多さも相まって中盤にダレる瞬間があるのが気になった。
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システム上、「戦闘で負ける、苦戦する」ことはほぼ想定していないのだろうから、いっそのこと戦闘はボス戦のみ、ボス戦も負けたらバフを掛けてとりあえず先には進める、のように戦闘の比重をかなり下げても良かったのかもしれない。
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004:デスペレートエランド
作者:ケイ素
プレイ時間:約1時間
レビュー時点のバージョン:1.6(旧バージョン)
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特殊ルールの戦闘が特徴的なノンフィールドRPG。技を使うためのエネルギー8枠を自分と敵とで奪い合い、自分・相手に技を使わせたり使わせなかったりすることで先に進行していく。
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独創的なオリジナルルールであるにもかかわらず、「発展形のテクニックが容易に思いつける」ぐらい堅牢に作られていると感じた。「自分の強い技を使える色を揃える」「相手に技を使わせない色を揃える」だけでなく、後半は「敢えて状態異常を起こす色を相手に使わせる」という戦略も出てくる。これがすごく白熱する。
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バランス調整のしやすさでそうなっているのかもしれないけど、後半は「デバフや状態異常でプレイヤーの行動を制限する」方向にばかり難易度が上がっていたのが少し残念。結局作戦がワンパターンになることが多くなるし、最終的に運任せになりがち。
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とは言え、「デバフや状態異常での行動制限」自体は悪いことではない。バランス調整しやすさとかのメリットがあるのも事実だからね。限度を超えない程度に軽くして、対策が比較的容易に、複数ルート思い浮かぶような「抜け道」を作ってあげることが大切。
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007:陰影遊戯 -魔王の命題-
作者:餓鬼郎党
プレイ時間:10~30分
レビュー時点のバージョン:1.07(旧バージョン)
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シルエットを見て、それが何かを当てるゲーム。それ以外の説明は出来ないほどシンプルな内容なのに問題が奥深い、異色の一発ネタ。
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ごめん、実はちょっとナメてたんだけど、いい意味で期待を裏切られた。シルエットクイズであることは間違いないんだけど、まさか「シルエットが何なのかは分かるんだけど名前が分からない」という二段構えで難易度を上げてくるとは。「すごい久しぶりにベンゼン環の知識が活かされた!」みたいな感じで、「自分の頭の奥底でホコリを被っていた知識を久しぶりに総ざらいする」不思議な感覚が味わえた作品。
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最後のレベル5だけはやり過ぎ感。正攻法でクリアするとしたらクイズ王レベルの知識量が要求されるし、一般の民に許された秘技「丸暗記」でごり押すにしても問題数が多くて暗記しきれない。エンディングを見るための必須イベントとするには難易度高すぎる。
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レベル5はクリア後のおまけとする、あるいはエンディングまでの必須とするのであれば問題数を少なめにするとか。本来は「コンテンツはあればあるほど良い」と思われがちだけど、このゲームのレベル5においてのみ逆効果になってしまっているかも。
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012:ワイたちはどうイキるか
作者:ルーカス
プレイ時間:ワイ81分
レビュー時点のバージョン:2.61(旧バージョン)
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キャラクターデザインは面取り(※)されているけれど、シナリオは一切面取りされていない、尖りまくりのRPG。アイテム・武器はほぼ全てガチャ入手、ワイ君が生きられるか(イキれるか)は1割のテクニックと8割の運、そして3割の作者さんとの相性で決まるんや。
(※)面取り:怪我防止などの目的で、材料の尖った角を丸くすること。建築・工業の世界でよく使われる言葉。
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「運」と「作者想定のプレイスタイルとの相性が合うか」で1面クリアできるかどうかも変動するクッソ大味なゲームデザインなのにもかかわらず、その中心に「面白さの原石」みたいなものを感じて何度も繰り返し遊んだ。こういう「狂っているけど破綻はしていない、大味のジャンクフード」がたくさん摂取できたのが昔のウディコンなんだよなあ、と懐かしくなった。
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一度敵にやられるとその敵が消えてレベルアップの機会を失う→そのまま先へ進めるけどその後の敵は強いものしか残っていない→必然的にワンミスしたらもう取り戻せない→ワイ無事死亡という「虚無の連鎖」が怖いンゴねぇ……
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せっかくスコアという「失敗せずに進めた人を評価する方法」があるのだから、失敗したあとも多少取り返せる救済方法が欲しかったンゴねぇww例えばスコアの換金とか。スコアが低いまま進めたとしても「【悲報】イキり続けたワイ君の末路wwww」とかネタには事欠かないんだから、とりあえず誰でもエンドまでは行ける必要があったんやな。
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013:落ちさえしなけりゃクリアはできる
作者:Qbit
プレイ時間:1~3時間
レビュー時点のバージョン:1.04
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いわゆる「壺おじ」タイプの苦行系山登りゲー。目の前の段差を一歩ずつマウスで登っていき、塔の頂上を目指すアクションゲーム。登るのは一歩ずつだが、気の緩みで全て無となるのは一瞬だから気を抜くな!
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このタイプのゲームとして珍しいと思ったのは「チェックポイント自由設置」の発想。自分が詰まりそうなアクションの直後に置いてショートカットできるために、トータルでの難易度はそう大きな差はないはずなのに「なんか行ける気」にさせてくれる。
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固定スクロール制だから「画面端から画面の外側に向かって飛ぶ」というシーンが多くて、ピクセル数の関係でジャンプ角度の精度が落ち、落下してしまうシーンが多々有った。これは難しいとかじゃなく「理不尽」かな、と。
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「理不尽なことも含めて難易度の高さであり、それが魅力じゃん」という考え方もあるし、これは単に制作者さんと自分の思想が合わないだけの箇所に見えるので、別に絶対直すべき箇所であるとは考えてないけどね。ただ、もし自分が類似のゲームを作るなら、キャラ画面中央固定の自由スクロールや0.5画面固定スクロールなど、「画面端での精密な動作を要求しない作り」とするかな。
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014:月神決戦弾
作者:えばぐり
プレイ時間:1周 30分程度
レビュー時点のバージョン:1.00
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ほのぼのとした雰囲気に油断すると、その弾幕の厚さに一瞬で圧倒される超硬派な弾幕シューティングゲーム。気合で避けるのがほぼ困難な高密度弾幕の中を、「弾を遅くする・消す」といった効果を持つ「魔法陣」を駆使し、ギリギリ攻略できそうな糸口を見出していくオリジナリティが特徴。
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プレイ前は「魔法陣とボムって使い分ける必要無くない?」と思っていたけど、その疑問を丁寧に説明してくれるチュートリアルが素晴らしい。決して少なくないゲームの独自システムをスムーズに理解できる。
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魔法陣常時展開してもなお「これを1面でやる?」レベルの弾幕の厚さは気になるかも。比較的初心者の自分でもなんとか行けたので杞憂かもしれないけど、序盤からだいぶ気合避けを要求してくるので、弾幕シューティングに慣れていない方は1面すら厳しい可能性を感じた。
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初心者救済要素として「魔法陣ノーコストで展開しっぱなしモード」とかあったほうがいいかも。難易度の高さが売りだったとしても、初心者さんが1面すらクリアできない懸念がある状態というのは望ましくないからね。
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018:Desire
作者:ゾローク
プレイ時間:10~15時間
レビュー時点のバージョン:1.7.9(旧バージョン)
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MOTHER/MOTHER2にインスパイアを受けたであろうことがひと目見てわかる正統派RPG。片田舎にママと住む少年がバットとヨーヨーとPSIを駆使し、やかんのお茶をがぶ飲みして回復しながら冒険していく物語。
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MOTHER2をクリアした夜に布団をかぶり、「もしこのゲームの世界に俺がいたら……」と妄想する、子供時代の創作と創造の原風景。そんな在りし日の、僕たちがいつの間にか忘れてしまった、でも本当は忘れちゃいけないピュアな感情をそのまま形にしてしまったような「若さによる眩しさ」に溢れた作品。
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同じマップの宝箱の中身が全部同じなのはきっと無節操にコピペしただけだからだろうし、マップ障害物は同じチップを無節操に置いた結果に見える。元ネタゲームで一番入念にこだわって作られている「マップの描き込み」がこっちのゲームでは一番手抜きで作られているせいで、すごい落差を感じてプレイ中に苦しさを感じる。
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問題なのは作品の出来そのものじゃなく、「バレバレの手抜き」であること。元ネタとプレイヤーさんにリスペクトとラブの気持ちを持って「常に自分の全力を皆さんにお出しする」「全力がお出しできないほどの長さにしてしまったなら断腸の思いで短くする」という考えを持つことが大切。
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019:うちのとりはイタズラしたい!
作者:GSA03& ナカマサ
プレイ時間:1~4時間(コンプ目指すと)
レビュー時点のバージョン:1.0
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ニワトリと少女で自宅(?)から脱出するドタバタ謎解き脱出ゲーム。脱出の過程で得る情報をもとに「そもそも主人公は何に閉じ込められているのか」を知っていく「シナリオの謎解き」もある欲張りセット。
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シナリオはいわゆる「ノーマルなドタバタ美少女ゲー」なんだけど、バディの片方をニワトリにするだけでここまでチグハグで面白くなるのか、と思った。話の芯には王道がありながら、少しズラす事で新しい視点を見せてくれたユニークさが面白い。
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「ドタバタ」と「チグハグ」と「シリアス」まではいいけど、更に「スベリ芸」や「おそらく他作品まで触れないと世界観が完結しないであろう身内ノリ」までが雑然と混ざっており悪い意味でカオスな構成になっているなー、と感じた。そのせいでシナリオの理解が進まない、あるいは展開に理不尽を感じるシーンもあった。特にエンディングシーンはそれが顕著。
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タイトル通り、主軸としたい内容は「うちのとりはイタズラしたい!」なのだから、そこから外れる要素は入れずに方向性を絞ったほうがもっと良い内容になったかも。登場キャラも終始二人(一人+一羽)のみにする、謎解きもストーリーに関係する内容のみにする、とか「あえて贅肉を入れない」という覚悟も必要。
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021:太宰府カンコー奇聞わたる
作者:ガミジ
プレイ時間:2~3時間
レビュー時点のバージョン:1.6(旧バージョン)
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福岡県太宰府の駅周辺をモチーフにした正統派RPG。修学旅行で訪れた「現実の太宰府」と、表裏一体の異世界「カクリヨ」を行き来しながら冒険していく。
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「これ、どこまで太宰府のリアルマップ再現しているんだろう」と思って、プレイ後にストリートビューで太宰府周辺をぐるぐる回ってみた。(多少脚色もあるけど、太宰府駅周辺をそこそこ再現しているっぽい)ゲームとしての楽しさもさることながら、プレイ後にも二度美味しい作品だった。そもそもリアル太宰府に興味を持たせた時点で、ゲームとしては目的を充分達成していると言えるのではないかな。
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「リアルマップと似た形のマップを切り替えながら話を進める」というのは発想としては面白いけど、マップの広さに比べて登場頻度が少なく、「マップが2つある」という特徴を活かしきれてない感じがある。ほとんどのマップは「同じデザインのマップを2回通る羽目になっているだけ」って感想になりそう。
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思い切って「ほとんどパズルゲームじゃん」と思わせるレベルでマップ切り替え謎解きを増やしたほうが、更にユニークさが増して魅力が大きくなる気がする。もとがRPGという「ほぼマップの構造を活かす機会のないゲームジャンル」なので、その対比として「マップをめちゃくちゃ活かすパズル」要素を強化すると良さそう。
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026:訳アリ領主とヒミツの武器屋
作者:はるしし
プレイ時間:6~8時間
レビュー時点のバージョン:1.02(旧バージョン)
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パズルで素材を加工し、生産した武器で経営シミュレーションする欲張りゲーム。経営シミュレーションらしく、常に画面全体でのリソースを管理しながら、メイン画面ではパズルも同時に行うという、ゲーム性も欲張っている作品。
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ルールが独特すぎる上に最初から目を向けなければならないポイントが多いのに、プレイ中にその事を苦痛に感じることは無かった。これは操作感やルールが直感で理解できる「手ざわりの良さ」や、初見だとクリアがほぼ不可能に思えてもコツが掴めてくると明確に改善していく「絶妙な難易度」とかが理由かな。おそらく細かいチューニングを何度も行った職人芸を感じさせるゲーム。
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常時マルチタスクを要求すること自体は問題ない。材料を発注してから入手するまでのタイムラグがあることもあまり問題ない。しかしこの2つが重なった時、「常に全部に気を向けていかなければならない上に一瞬のタイミングを見逃すと手遅れになりがち」という負の相乗効果が働いてしまっている。
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「割高だけど材料を購入できる」、「対価を支払って探索時間を短くする」とかの、多少リスクがあってもいいので手遅れになった後からでも巻き返せる要素があれば、やらかした後の「敗戦処理」みたいな時間が無くなり、最後までギリギリの勝負ができて魅力的になるかも。
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028:Ayaのホームページへようこそ!
作者:苺いちえ
プレイ時間:1時間30分くらい
レビュー時点のバージョン:1.04(旧バージョン)
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作者さんが明らかに「当時を知りし者」であることが端々から感じ取れるほどに、「2001年頃のインターネット」を忠実に再現した世界観の中で繰り広げられる謎解きジュブナイルミステリー。サイトの管理者さんが何かしらの事件に巻き込まれているらしい、という違和感をサイト内の文章から寄せ集めて、一つの真実へ向かっていく。
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このゲームの「ゲーム性と呼べる箇所」って実は「パスワードを推理するパズル」1つしかないのだけど、その事を全く感じさせないぐらいパズルがこだわって作られている。1つの問題がストーリーの進行によって複数の意味を持ち、序盤と終盤で全く違う解答を導出するところは、まるで一つの長編小説を読み切ったぐらい心が動いた。
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サイトによる「世界観の掘り下げ」は素晴らしすぎるほど出来上がっているのだけど、そのぶん「キャラクターの掘り下げ」に関して浅さを感じたところはあるかも。ネタバレしない程度にぼかして書くと、「途中でK君がストーリーの軸になるタイミングがあるけど、その時点でK君のパーソナリティがほとんど明かされてないから、『知らねえ人がよくわからないことやってる~』という感想になる」ところとか。
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現時点でもかなり魅力的なシナリオであることは確か。ただ、どんでん返しを際立たせるための伏線をもっと丁寧に張れていればより魅力的になったかもしれない、という提案。学校のホムペや隠しページで事前に登場人物の性格やパーソナリティを補強していれば、更に魅力的なシナリオになったのかも。
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034:雨を乞う弔鐘
作者:もっともやし
プレイ時間:一周1~2時間程度
レビュー時点のバージョン:1.03(旧バージョン)
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会話の分岐によってエンディングが分岐するアドベンチャー。突然謎の館に連れてこられた主人公が、4日間館の住人と交流しながら館の情報を集め、真実を見つけ出していく。
住人たちは館の中を常に移動しているため、「いつ、どこに誰がいるか」を周回して情報を集めながら、必要なエンディング条件を達成していくことが特徴。
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デザインが雰囲気を演出するために細かいところまで徹底されていることが一番の魅力。UIやアイテムはもちろんのこと、操作説明用のチュートリアルから音量調整のコンフィグまで「ゲームの雰囲気に合わせた特徴的なデザインでありつつも、プレイヤーの操作性を損なっていない」という、魅力的な作りになっている。
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ほとんどのエンディングの条件が「終盤までの行動は一本道で、最後の行動で話が分岐する」となっているところが惜しい。そのために、せっかくの「いつどこに住人がいるかを周回して情報を集めながら推理する」要素は終盤までほとんど活かしきれていなかったと感じる。
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もっと「住人たちの行動パターンをすべて把握したうえで、初日から動き始めないといけない専用ルート」とかがあれば情報収集の甲斐もあったかもしれない。やりすぎると難易度が高くなりすぎて誰も見れなくなるから調整は難しいけどね。
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アロエちゃんいいよね……根こそぎ吸血したい……(*´Д`*)
035:アイドルライバー
作者:シブサワ・コウの名を継ぐ者
プレイ時間:30分
レビュー時点のバージョン:8/14公開版
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新人配信者を8週間育成して、トップ配信者への道を駆け上がっていく育成アドベンチャー。メイン部分は育成ゲームとして、おまけ部分はAI文章生成をフル活用した「臨機応変にその場を切り抜ける」リアル配信のような立ち回りを楽しめる、2つの要素を同時に楽しめるお得な作品。
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背景素材とBGM素材を見て一目で気づいた。これは「配信者(特にVTuber)を詳しく知る人」の素材チョイス。もともとかなり詳しい方なのか、あるいはこのゲームを作るためにかなり深く勉強したのか。いずれにしても「配信文化に愛のある人」がこだわって作ったアドベンチャーゲームという好印象を受けた。
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これはある意味仕方がないことなのかもしれないけど、ゲームとしての大枠は非常に魅力的なのに細部に「突貫工事」感が見え隠れする。ウディタのデフォルト選択肢とマウス操作は相性悪め(決定動作が誤動作しがち)なのに選択肢ですべての操作を行おうとしている箇所や、もはや「おまけが本編」となりそうなぐらいおまけの比重が高い作りになってしまっているところなど。
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「ある意味仕方がない」と書いた通り、これは制作者さんの労力の割り振りに対する思想なので、一概に悪いと言うことは出来ない。「質より量」という考え方の場合、これからも気にせず作り続けてほしい。もしちょっと質を気にするのもアリかな、と思った時、一度細部を観察してみるのは大切かも。
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自分もアバターの姿で配信したことが一瞬あるので、これはいい機会と思って「自分のアバターをゲーム中に登場させるアバターデータ」を作成してみました。このゲームをプレイする方はぜひ遊んでみてね。
037:名もなき記録
作者:今門 楽々
プレイ時間:10~20分
レビュー時点のバージョン:1.0
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すごいざっくりと説明するなら「忙しい人向けなろう系ノベルアドベンチャー」。戦う以外の選択肢を知らないまま二国間で争い続ける少年少女たちがボーイミーツガールの果てに「新しい選択肢」を探していく物語。
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タイトル画面から微妙な違和感を感じ、その違和感は仕組まれたメタ的演出であることに気づくように作られ、違和感の正体をすべて回収されてエンディングへ向かう様は「短いながら綿密に考えられたシナリオ」という感じがして、プレイ後に爽快感を得られた。
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気になるのは「プレイヤーの選択」と「選択結果としてのシナリオ進行」に整合性がなくて置いてけぼり感強かったこと。具体的に説明すると「一見本筋になんの関係もなさそうな選択肢であるにもかかわらず、片方がバッドエンドでもう片方がトゥルーエンドであることに納得できる説明が貰えない」感じがした。
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プレイヤーさんが選択の結果に納得できる選択肢にするか、選択肢を露骨にすることが世界観的に合わないというのであればいっそのこと選択肢無しでもいいぐらいかもしれない(流石に極論かもしれないけど)。それほど「プレイヤーの意思がゲームに伝わらない」ことは避けるべきこと。
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040:Rewot.16ーリワット イチロクー
作者:植物の灰
プレイ時間:3~5時間
レビュー時点のバージョン:1.19
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RPGでは頻繁に登場しつつも、何故か軽視されがちである「毒」を主題に置いたうえでゲーム全体を構築しているRPG。全ての敵が状態異常能力を持ち、かつ全ての状態異常が効くという条件下で、半ばパズル的に毒を活用して敵を倒していく。さらに「毒は薄めれば薬」理論で、敵の毒から回復薬を作って現地調達するのも特徴。
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世界観の作り方が突出している。しすぎている。真っ暗なシナリオを対比させるような真っ白い画面。一切違和感を感じさせず、シームレスに転換していく曲。まるで現実にはありえない世界設定なのに、「もしかしたら本当にあった話がベースなのかも」という説得力すら感じさせる話のパワー。プレイ後に現実世界がぼやけてしまうような、「胡蝶の夢」とでも言えそうな感覚を受けた。
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世界観が素晴らしい中、唯一気になったのが道中のワンパターンさ。イベントとイベントの間は、あまり特徴のないシンプルな流れを何度も繰り返す事になってダレる。せっかく美しい世界なのに、その先に待っているのがシンプル作業という事実がサソリ固めのように少しずつモチベーションを蝕んでいく。
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とは言え、ここで道中に何を追加したとしても蛇足になる気がしている。あえて入れるとしたら会話イベントなどのテキストフレーバー?「この作品はこのままでいい」とは手放しで言えないけど、「でも冷静に考えてみるとこれしかないのかも」とも思ってしまう。答えは自分には出せません。そのぐらいこの作品は突き抜けた素晴らしさがある。
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045:僧侶竜の導き
作者:あまてん海老
プレイ時間:10~30分
レビュー時点のバージョン:1.00
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飲酒大好き破戒僧で強いドラゴンな破壊僧が迷える仔羊を導くアドベンチャー的ゲーム。告解しにきた魔物や人間に正しい回答をしてポイントを稼いでいこう。稼いだポイントは全額酒ガチャに貢ぐけどな!
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正論=正解とは限らない設計が秀逸で、話を単純化しないための「外し」が効いている。しかし結果を見ると「確かになぁ」と思える内容で「大外し」はしていない。この「絶妙なバランス感」を短いプレイ時間で感じさせてくれる、力量のある作者さんだと思う。
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「ゲーム中にどんな選択肢を選んだとしてもストーリーに一切の分岐がない」というのが気になった。このせいで本編は「虚無」と化しているし、何なら「本編がオマケ要素の前座」と言えそうな作り。
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オマケ要素を作るよりも、本編のエンディングストーリーを3つぐらい作ったほうが同じ労力でも評価は全く異なったのかも。ゲームというものは「縦に長く伸ばす」よりも「横に幅を広げる」ほうが評価される作品になる傾向がある……と、自分は思ってる。
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051:みてくれというけれど
作者:みやの
プレイ時間:30分以上
レビュー時点のバージョン:1.14
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ゲームのReadmeやサイトの文章を読み比べながら、ゲーム実況プレイヤーが規約違反をしていないかを調べて回答するゲーム……かと思いきや実は……?というノベルゲーム。相談相手が欲しい言葉は必ずしも「正論」であるとは限らないのです。
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おそらくこのゲームは「ゲーム制作者」「ゲーム実況者」「視聴者」の三者で別の感想を持つような気がするし、それぞれに別のメタ演出が刺さるような気がする。深く印象に残る、というよりは、「心の奥深いところでいつまでも刺さっているトゲ」として存在するシナリオが一番の魅力。
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シナリオは魅力的であることは確かなのだけど、非常に僅かな部分で惜しさを感じた。「繋がっていないバラバラのシナリオが乱雑においてあるだけ感」、というか。「軸が揃っていないブレブレ感」とでも言うべきものを感じる。
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特に(実質トゥルーエンドの)ED1が最もシステムから乖離した作りというのは残念かも。「規約違反を探す」システムとED1のシナリオに何かもう少し関係性があれば、より深く共感できたのかもしれない。
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054:STELLA FORMULA
作者:なべのひと&北街かな
プレイ時間:1プレイ10分~(個人差あり)
レビュー時点のバージョン:0.94
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ランダムな5つの数字に四則演算記号を追加して目標値ピッタリにするゲーム。多くの人が自動車のナンバープレートや電車の切符などで遊んだと思われるこのゲームを、「必ず正解があることが確定しているっぽい」という安心できる状況で楽しめる。
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括弧による優先順位のある四則演算をこれほど高速に、かつ視覚的に見やすく構築できる技術力が見事。こういう「しれっと技術的なことをやっていて、それをプレイヤーさんに気づかせない」というのは制作者さんのスタンスとして個人的に憧れる。
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チュートリアルで「お助けアイテムがある」という話が出てくるけど、その後一切ゲーム中にも説明にもそれらしき要素が出てきてない。もしかして未実装かしら?
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とりあえず20問以上解いたうえで一切進展がないことを踏まえて未実装と判断して評価するけど(もし実装済みで見つけてないだけならごめん)もし未実装ならその旨はちゃんと説明していてほしいな。ただ、この点で最も問題なのは「未実装であること」そのものではなく「本当に実装しているかどうかも曖昧に書くことしかできないほど細かい説明が不足していること」。ゲーム本編以外の状況解説、説明を増やしたほうがいいかも。
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057:Go Down, B-Girl!
作者:なす太郎
プレイ時間:1~3時間、飽きなければもっと
レビュー時点のバージョン:4.00(旧バージョン)
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ブレイキンのテクニックを育成要素で習得し、それをカードとして使ってダンスバトルに挑むゲーム。観客を自分側につけるか相手側につけるかがリバーシ的に決まるので、闇雲に強い技だけを使えばいいというわけでもないパズルゲームの要素もある。
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カードゲームでもあり、観客を赤青にするリバーシでもあり、育成ゲームでもあるルール構成を見たとき、「おいおいフルコースかよ」と思った。1つでも充分ゲームとして成り立つシステムを贅沢に、しかも破綻なく、更にはゴチャゴチャすることなく初見プレイでも理解しやすいほどに整理された作り。これは並大抵の人にはできない「高み」を見せてくれるゲームだな、と思った。
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「デッキを吟味する」という要素を意図的に抜いたことで、とっつきやすくなった代わりに「推しコンボ」みたいなものも無くなり、結果としてカード引きの強さですべて決まる運ゲーの側面が強くなったような感想を持った。
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とは言え、これは「手軽に遊べる」を突き詰めた結果のトレードオフだと思うので、必ずしも「直すべき欠点」とは思っていない。でも、もしかしたら、ここを突き詰めればどこかに「トレードオフ無しで両方の問題を同時に解決するアイデア」なんてものが見つかるかもしれない。自分も今のところ答えを見つけられていない無茶ぶりだけど。
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060:あんでっどハザード
作者:もののふげーむず
プレイ時間:1~2時間
レビュー時点のバージョン:1.12
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制限時間が無くなる前に島を探索し、呪いを解決していくシンボルエンカウント方式のアクションRPG。アクションは比較的シンプルだが制限時間はかなりシビアで、効率の良い動き方を覚えていくパズルやRPGとして楽しめる作品。とりあえず、自分から言えることは「敵のレベル表記は”まやかし”ということに気づいてからが本番」ということ。
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決して派手ではない、でもあると嬉しい「細かい箇所の演出」にこだわっている作品という印象。敵ごとに異なる魔法エフェクトのバリエーションが用意されていることやヌルヌル動く敵・キャラドットに「職人技」を感じながら楽しめた。そしてその「職人技」を全て注ぎ込んだまま超ド派手にしたラスボス隠しバトルの集大成っぷりも好き。
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唯一気になったのがアクションの操作性。アクション後の硬直、というか「ウエイトのせいで意図的にボタン入力を無視する時間」みたいなタイミングが各所で入ってきて、思った通り動かしづらい瞬間があった。
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おそらくこれはアクションシーンを全てウディタ標準のマップ機能・イベントチップ機能で組み上げた事によるものだと推測するので、ある意味仕方がないところはある。何なら、「あの制限のあるマップ機能の中でよくここまで組み上げたなあ」という感動すら感じている。完全に邪道の楽しみ方だからレビューで書くのは正直どうかと思うけどね。へへへ。
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